男性から提供してもらった精液を、医療機関の手を借りて、女性の子宮内に注入することを人工授精と言います。
その名称から、単に人工的に行う妊娠というイメージを持たれる方もいますが、けっしてそんなことはありません。
人工授精は、精子の活動が低かったり、数が少ない場合の治療方法として特に適しています。
かなり以前は、採取した精液をそのままの状態で子宮に注入するという方法が主流でした。
しかしこれだと妊娠率が低く、細菌などの感染も考えられるため、現在では精液の洗浄やの濃縮が行われています。
一方、女性の側に何らかの原因があった場合にも、人工授精が行われるケースがあります。
排卵が近づくと同時に、女性の体では精子を受け入れやすくなる子宮頚管粘液の分泌が盛んになります。
逆にこの子宮頚管粘液が不足すると、精子は子宮の中まで進むことができません。
人工授精では精子を卵子のより近くまで届けることで、妊娠の可能性を高めるんです。
また、他人の細胞が体内に入ることから、女性の体内にパートナーの精子への免疫抗体(抗精子抗体)ができてしまうケースがあります。
これは膣内で起こる反応なので、人工授精ではこのリスクを回避し、子宮内まで精子を届けることで妊娠を促しています。
ただし、不妊症治療ではこの人工授精を最初にいきなり行うことはまずありません。
不妊症の治療にはいくつかの段階があります。例を挙げると次のような順です。
基礎体温表や、経膣超音波による卵胞計測、及び頚管粘液検査によって排卵の時期を推測します。
(通常3ヶ月間程度の経過観察をします。)
投薬で卵巣に働きかけ、卵胞の発育と排卵を促します。
(通常6ヶ月間の経過観察をします。)
黄体ホルモンを補充する治療方法です。黄体ホルモンは卵巣から分泌されるホルモン。
これが不足すると、着床しにくくなったり、妊娠初期での流産につながります。
(通常ここで6ヶ月間程度、経過観察をします。)
超音波検査により排卵を予測。
持参した精液の洗浄と濃縮を行い、子宮腔内に注入します。
もちろんこの治療の流れは一例に過ぎず、実際には患者さんの年齢や相談内容、体調などにより変化します。
また子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が発見された場合は、人工授精の前に治療が施されます。